ニュースリリース

Jマテ.カッパープロダクツ 外観検査工程を自動化出来るAIシステムの開発 成果と今後について 〜Joemate Visual Inspector by Nagaoka KOSENシステム構築へ〜

お知らせ2023年04月04日

Jマテ.カッパープロダクツ株式会社
代表取締役社長 山本耕治

 

Jマテ.カッパープロダクツ株式会社(本社:新潟県上越市、社長:山本 耕治、以下「当社」)は上越市地域中核企業成長促進モデル支援事業補助金を活用し2022年10月20日にリリース致しました外観検査工程の自動化に向けたAIシステム開発、長岡工業高等専門学校との共同プロジェクトについて土台となるAI基幹システム「Joemate Visual Inspector by Nagaoka KOSEN(以下JIN(ジン)」の一次開発を完了したことをお知らせいたします。

 

■背景について

当社は2022年10月20日にプレスリリースにて発表した、独立行政法人国立高等専門学校機構長岡工業高等専門学校 電子制御工学科 酒井助教(所在地:新潟県長岡市、校長:小林 幸夫、以下「長岡高専」)との共同プロジェクトによる、外観検査工程の自動化を可能とするAIシステム開発を2022年10月14日より開始いたしました。外観検査工程の自動化を可能とするAIシステムを構想し、人間が感じるものと同様の違和感(異常)から不適合発見に繋げる事のできる汎用性を持ったAIシステムの構築を本プロジェクトの目標とし、開発検証を進めて参りました。

 

JIN開発状況について

AI基幹システム「JIN(ジン)」の一次開発では、精度安定化のため、対象製品1種類、検査項目1項目(キズ)に絞り、AIによる外観検査の土台となる部分の研究をおこないました。JINは、AIの計算に適したマイコンボードと検査対象を撮影するWebカメラ、そして違和感判断AIと異常位置検知AIのプログラムと学習済みパラメータによって構成されます(図1)。

 

図1 AIシステム(JIN)の概念図

 

違和感判断AI の構築

  • データセットの作成

正常な製品の写真と不良のある製品の写真を様々なバリエーションで複数枚用意しました。画像分類のAIのモデルには既に学習済みのパラメータを初期値として、今回作成したデータを追加することにより全体のパラメータ更新を行う手法でシステム構築を行いました。

 

  • 結果

正常、不良の複数の写真をAIに学習させ、そのテストを繰り返していく中でAIの精度向上を図りました。図2で示す通り、学習を繰り返す中で学習が収束している事がわかります。

図2 画像分類AIの学習曲線

 

次に、AIがどの部分を注視して判断をしたかの可視化を行いました。

可視化結果の一例が図3となります。図3(a)は右部に小さい傷のある製品に対しAIは不良品と正しく判別できたものであり、図3(b)を見るとAIは傷のあたりを含む領域に注視して判断したということがわかりました。

 

 

                  (a)入力画像               (b)注視部分の可視化結果

図3注視部分の可視化の実行例

 

一方で、光の当たり方に注視して判断をしていたものもあり精度については一次開発の段階では

まだ課題があることもわかりました。今後、撮影条件を揃え、データ数を増やし精度を高めていく必要があります。

 

異常位置検知AIの構築

  • 物体検知モデル

異常位置検知AIのベースとなる物体検知のAIのモデルには、最新の物体検知モデルと事前学習済みモデルを用いてAIモデルの構築を行いました。

 

  • 結果

異常位置検知AIの性能を評価したところ学習用画像データについては29%を検知、検証用画像データについては14%を検知と割合としてはあまり高くない結果となりました。その中でも、傷のある画像を入力し、傷を検知できた結果の例が図4の傷を検知した例となります。

図4 傷を検知した例

 

■今後の取組について

今回の共同研究では製造ラインにおける製品の外観検査を行うAIシステム通称”JIN”(Joemate Visual Inspector by Nagaoka KOSEN)の開発を目的とし、その土台となる違和感判断AIと異常位置検知AIの開発および効果の検証を行いました。その結果をもとに、今後は日々採取できる製造現場の生のデータを活用し学習を深めることで更なる精度・汎用性を向上させ、運用に耐えうる性能を持ったシステムに仕上げていきます。

また、2年目以降は長岡高専の学生の皆さんにも参画してもらい、共に分析しながらAIのアップデートを繰り返し、精度を向上させ、2024年度でのAI自動外観検査システムの完成を目指し取り組みを進めて参ります。

 

【Jマテ.カッパープロダクツ株式会社 プロジェクトリーダー 山下取締役のコメント】

今回は人間が感じるものと同様の違和感(異常)の開発は実現可能であることの確認が取れ、JINの土台となる基幹システムを完成させることが出来ました。

しかし、開発途上のシステムであり精度にはまだまだ改善の余地があります。

中小規模の企業を取り巻く環境は日々変化し厳しい環境です。これからも持続可能な製造業を日本で行えるようJINを活用しながら省人化、活人化を進め、JINの開発、精度向上の取り組みを通じ地域将来の継続的な発展を担うAIエンジニアの育成、技術発展に繋がる事を願っております。

 


 
【会社概要】
Jマテ.カッパープロダクツ株式会社
・設立:2005年4月1日
・本社所在地:新潟県上越市大潟区土底浜2024-1
・代表者名:代表取締役社長 山本 耕治
・URL:https://www.jcp.joemate.co.jp/
・事業内容:銅合金連続鋳造品・遠心鋳造品・押出品の製造加工販売、
銅合金地金の製造販売、上水道配管部品、産業機械部品