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銅合金辞典

記事公開日

世界の水道設備事情:日本と海外で異なる「銅合金材料」のトレンド比較【世界の水道関連事情:後編】

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はじめに

前編では、日本の「軟水」という環境が、長期信頼性に優れた「青銅(ブロンズ)」という選択を後押ししてきた歴史を解説しました。
続く【後編】では、視点を世界に向けて北米、欧州、そして日本の「鉛(Pb)規制」の最新トレンドを紐解いていきましょう 。

世界共通のルール変更「鉛(Pb)を減らそう」

各国の違いを見ていく前に、まずは世界共通の背景を押さえておきましょう。ここ10数年において世界の水道設備業界で最も大きなテーマとなっているのが「鉛(Pb)の低減」です 。

なぜ、そもそも鉛が入っていたのか?

かつて、水道用の青銅鋳物や快削黄銅には、意図的に鉛が添加されていました 。これには製造上の重要な理由があります。鉛は銅の中に溶け込まず、組織内で粒状に分散します。これが金属を削る際に潤滑剤のような働きをし、切粉(きりこ)を細かく分断してくれるのです 。つまり、「きれいに、速く、大量に加工するため」に、鉛は欠かせない成分でした 。

なぜ、規制されるようになったのか?

しかし2000年代に入り、WHO(世界保健機関)の指針などを背景に、飲料水への鉛溶出による健康への影響が懸念されるようになりました 。これに伴い、世界各国で給水装置からの鉛溶出基準が厳格化しました。「鉛を使わずに、いかに従来の性能を出すか」という、材料の大きな転換期を迎えることになったのです 。

北米のトレンド「ビスマス系青銅」「シリコン系黄銅」が広く流通

アメリカ・カナダを中心とした北米地域では、連邦法レベルでの規制強化により、非常にスピーディーに鉛レス化が進みました 。

  • 主役は「ビスマス」と「シリコン」 北米で、鉛の代わりとして広く採用されているのが「ビスマス」を添加したビスマス系青銅材(C89833,C89844,C89835 等)と「シリコン」を添加したシリコン系黄銅材(C69300,C87850 等)が広く流通しています 。
  • なぜビスマスやシリコンが選ばれたのか? 最大の理由は、「鉛と似た働きをするから」です 。特にビスマスにおいては鉛と同じように銅の中には溶け込まずに分散するため、従来の鉛入り合金に近い感覚で切削加工ができ、既存の生産設備やノウハウをそのまま流用しやすいというメリットがあります 。シリコンにも切削性の向上効果が見込め、大量生産・大量消費の北米市場において、この被削性の維持は非常に合理的な選択でした 。

ただし、ビスマス系合金は凝固する際の収縮挙動や、高温になった際の脆さ(もろさ)などが鉛とは異なります 。そのため、鋳造や加工の現場では、ビスマス専用の温度管理や条件設定が必要になります

欧州の動き「シリコン系黄銅」の流通はこれからか。

次に、ヨーロッパの状況です。欧州では、飲料水向けの規制は存在しているものの鉛フリー材への変換が進んでいないのが実情です。

特にビスマス青銅系の動きは限定され、シリコン系の黄銅も徐々に市場拡大はしているもののこちらも限定的になっています。現在においても鉛を含んだ黄銅材が広く流通しているところとなっています。

  • 現在でも鉛含有黄銅材が主役 鋳物系においてはCC750SCC754S、伸銅材についてはCW614NCW617NCW607NCW602Nといった鉛を13%程度含有している黄銅材が広く流通しています。
  • 今後のEU飲料水指令(Drinking Water Directive)の厳格化の動き 将来的には飲料水中の鉛基準値が現行の10μg/Lから5μg/Lへ厳格化が予定されており、SI系黄銅の代表型番であるCW724Rの流通が増えてくるとも考えられています。

日本のトレンド「適材適所のハイブリッド対応」

最後に、日本の状況です。JIS規格や日本水道協会の基準により、鉛の溶出基準は厳しく管理されています 。日本メーカーは、単に海外の真似をするのではなく、2つのソリューションを用途に合わせて最適化しているのが特徴です 。

選択肢:加工性を継承した「ビスマス青銅(CAC902C)」

材料そのものを鉛レス合金に置き換える選択です 。

  • なぜ選ばれるのか: 従来の青銅(CAC406C)と同等の強度と伸びを持ちながら、良好な切削加工性を維持しているためです 。
  • 適した用途: 複雑な形状の加工が必要な水道部品や、環境規制(RoHS/REACH)への適合が必須となる産業機械部品に最適です 。

選択肢:実績ある「青銅(CAC406C)+NPb処理」

長年の実績がある材料を、最新の表面処理技術で活かす手段です 。

  • NPb処理とは: 接水部の表面に付着している鉛を特殊なアルカリ溶液で洗浄・除去し、被膜で安定化させる技術です 。
  • 適した用途: 「作りやすさ」や「寸法安定性」といったCAC406C本来のメリットを活かしたい場合や、既存の設計を大きく変えずに基準をクリアしたい場合に最適です 。

 ここでは2つの提案を行っていますが、弊社においてはシリコン黄銅材の製造販売も上記のNpb処理も行っており、そちらの採用も検討いただければと存じます。

まとめ:環境が変われば「最適」も変わる

技術者が押さえておくべき視点として重要なのは、「なぜその材料が選ばれているのか」という背景(規制や水質、製造コスト)を理解することです 。国や手段は違っても、銅合金が持つ「安全である」という価値は変わりません 。世界のトレンドを理解し、適切な材料を選定できる目を養っていきましょう 。

貴社の製品に最適な「鉛レス化」をサポートします

今回の前後編を通じ、各地域の材料戦略の違いが見えてきたかと思います。「輸出先が欧州なのでシリコン系を検討したい」「国内での加工性を重視してCAC902Cに切り替えたい」など、具体的な課題はございませんか?それぞれの材料特性に基づいた最適な選定ガイドをご提供いたします。

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