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銅合金辞典

記事公開日

青銅(ブロンズ)、りん青銅・砲金の違いと切削のポイント

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青銅(ブロンズ)、りん青銅・砲金の違いと切削のポイント

銅合金の世界は奥が深く、特に「青銅(ブロンズ)」は古くから現代に至るまで、私たちの暮らしや産業を支え続けている重要な素材です。しかし、現場で「青銅を削る」となると、その種類によって特性が大きく異なり、戸惑うことも少なくありません。

今回は、実務で目にする機会が多い「青銅鋳物(砲金)」と「りん青銅」に焦点を当て、それぞれの違いや加工上のポイントを整理して解説します。

青銅の定義と現場で使われる主な規格

まず、青銅の定義を改めて確認しておきましょう。青銅とは、銅(Cu)を主成分として、スズ(Sn)を主な添加元素とした合金のことです。実務の現場では、大きく分けて次の2つの系統がよく使われます。

青銅鋳物(例:CAC406 / 旧称:BC6

一般に「砲金(ガンメタル)」と呼ばれるものです。銅、スズ、亜鉛、そして鉛をバランスよく配合した合金です。現行のJIS規格では「CAC406」といった記号で管理されています。鋳造性(複雑な形に鋳込む性質)や耐食性、加工性に優れているのが特徴です。

りん青銅(例:CAC502 / 旧称:PBC2

こちらは銅とスズの合金に、製造過程での脱酸剤(酸素を取り除く薬剤)として「リン(P)」を加えたものです。伸銅材としても広く流通しており、連鋳材はギアや軸受け用途がメインとなります。リンが含まれることで、溶けた金属の流動性が良くなるだけでなく、製品としては硬度や引張強さ、バネ特性が向上します。

なぜその材料が選ばれるのか? 用途と特性の背景

材料を選ぶ際には、その場所で求められる機能に応じた「使い分け」がなされています。

バランスが求められる用途には「青銅鋳物」

砲金は引張強度や硬度、伸び、被削性(加工性)に優れ、さらに耐圧、耐摩耗性能や耐食性能もある程度の高水準で有しており、銅合金鋳物材のスタンダード材として、広く流通しています。主にバルブやポンプ部品、水道金具、軸受などに重宝されています。

強度とバネ性が求められる場所には「りん青銅」

りん青銅の大きな武器は、繰り返し変形させても壊れにくい「耐疲労性」です。強度とバネ特性の力を維持できるため、伸銅品ではスマートフォンや精密機器のコネクタ、スイッチのバネ端子など、小さくても高い信頼性が求められる部品に採用、鋳物材ではかじり性の強みからギアや一般工業製品に広く採用されています。

切削加工における技術的なハードル

青銅の加工は、鉄などの硬い材料に比べれば削りやすい部類に入りますが、独特の「粘り」と「熱」が加工精度を左右します。

「粘り」が引き起こすバリと溶着

青銅は合金化されているとはいえ、銅本来の「粘り(延性)」を強く持っています。そのため、削っている最中に切りくずが長くつながりやすく、それが刃先に絡まったり、刃先に焼き付いて「構成刃先(溶着)」を作ったりすることがあります。これが原因で、加工した面が荒れてしまったり、予想以上に大きなバリが出てしまったりするのです。

「熱」がもたらす寸法変化と工具の摩耗

銅合金の共通した特徴として、熱伝導率が高いことが挙げられます。切削で発生した熱が材料や工具に素早く伝わるため、長時間加工を続けていると工具が熱を持ち、硬度が下がって摩耗が進んでしまいます。また、材料自体も熱で膨張しやすいため、加工直後の寸法が合っていても、冷えた後に測ると公差から外れてしまうといった失敗が起こりやすい素材です。

加工品質を安定させるための管理ポイント

青銅や真鍮などの銅合金において、高品質な仕上がりを維持するためには、材料特性に合わせた加工条件の管理が重要です。

工具選定:切削抵抗を抑える形状

粘り強い特性を持つ青銅に対しては、切削抵抗の低減が加工精度の向上に直結します。 刃先の摩耗や構成刃先(溶着)を防ぐため、すくい角が大きく設計された、切れ味の良い工具を選定することが推奨されます。これにより、バリの発生を抑制し、寸法精度を安定させることができます。

油剤選定:変色リスクへの配慮

加工熱の抑制と切りくずの排出には、適切な切削油(クーラント)の供給が不可欠です。 ただし、銅合金は油剤に含まれる成分(特に活性硫黄)と反応し、表面が黒く変色する性質があります。そのため、銅合金の加工においては、硫黄分を含まない「不活性型」または「銅合金対応」と明記された油剤を選定することが一般的です。

熱処理:残留応力の除去による寸法安定

特にりん青銅のようなバネ特性(弾性)の高い材料では、加工時に生じる内部応力が原因で、後に寸法変化や「時期割れ(自然割れ)」が発生するリスクがあります。 ミクロン単位の精度や長期的な信頼性が求められる製品においては、仕上げ段階で「応力除去焼鈍」を行うことが有効です。蓄積された内部応力を取り除くことで組織を安定させ、寸法の経時変化や不意の割れを防ぐことができます。

これからの時代:鉛レス化への対応

最後に、現在の大きな潮流についても触れておきます。これまで耐摩耗性や被削性の向上に役立ってきた「鉛(Pb)」ですが、環境規制(RoHS指令など)の強化により、鉛を含まない材料への転換が急ピッチで進んでいます。

代わりにビスマス(Bi)やセレン(Se)を添加した「鉛レス銅合金」が普及していますが、これらは従来の材料とは凝固の仕方や削り心地が異なります。

「今までの砲金と同じ条件で削れるだろう」と思い込まず、新しい材料を使う際には、改めて切削条件を見直す姿勢が重要です。

まとめ:材料の個性を理解し、条件を合わせる

青銅は、含まれる元素ひとつでその性質が大きく変わります。

  • 青銅鋳物(砲金): 鋳造性・被削性・耐食性のバランスが良く、銅合金鋳物の中で最も汎用的に使用されている代表的な材質です。
  • りん青銅: 強度とバネ性を兼ね備えており、電気・電子部品の端子材や、高い耐摩耗性が求められるギアなどの機械部品に広く普及しています。

どちらの材料を扱うにしても、大切なのは「粘り」と「熱」をどうコントロールするかです。材料の特性に合わせた工具選びと温度管理を積み重ねることで、安定した品質を作り出すことができます。

まずは目の前の材料が「どの規格(CACCか)」で、「どのような性質(鋳物か展伸材か)」を持っているのかを確認することから始めてみてください。

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