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図面寸法で注文して大丈夫?銅合金加工で知っておきたい「素材寸法」と「加工代」の基本
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銅合金加工で知っておきたい「素材寸法」と「加工代」の基本
銅合金の加工品を扱う際、新人の皆さんが最初に直面する戸惑いがあります。それは「図面に書かれた寸法で材料を注文しても、そのままでは使えないあるいは足りないという部分です。
青銅や砲金などの材料は、図面の完成寸法そのままで流通しているわけではありません。削り出すための余白、つまり「加工代(かこうしろ)」を見込んだ「素材寸法」で手配することが必要です。今回は、現場でのトラブルを防ぐために欠かせない、素材の呼び方と寸法の考え方を整理しましょう。
混乱を防ぐための基礎知識:3つの「寸法」を使い分ける
実務において、ひと口に「寸法」と言っても、状況によって指している内容が異なります。まずは以下の3つを明確に区別しましょう。
- 呼称寸法(こしょうすんぽう): カタログや注文時に使う「名前」としてのサイズです。
- 素材寸法(実寸): 実際に納入される材料の生身の寸法です。呼称寸法に対して、わずかに大きい状態で供給されるのが一般的です。
- 完成寸法(図面寸法): 加工を経て、最終的に図面指示を満足させる寸法です。
つまり、「素材は少し大きめに入荷し、それを削って図面通りの完成寸法にする」という流れが基本です。
素材のカタチを知る:バー材・切断品・ピース材の違い
材料を注文する際、どのような姿で届くのか(素材形態)によって、精度の考え方が変わります。
バー材(長尺材)
一般に2m〜3mといった長さで流通する丸棒や中空材(パイプ状の材)です。外径は呼称寸法で管理されていますが、端面(切り口)の直角度や表面の滑らかさは保証されていません。あくまで「これから加工するための素材」として扱われます。
切断品(カット材)
バー材を指定の長さ(L寸)で切断した状態です。切断機による「切り落とし」のため、長さには数ミリ単位のばらつき(切断公差)が生じます。切断面をそのまま製品の完成面として使うことはできません。
ピース材(加工用素材)
外径・内径・長さのすべてに、あらかじめ削り取るための「加工代」を付けた個別ブロックです。加工の手間を最小限にするために、完成サイズより一回り大きく切り出された素材を指します。
現場で誤解されやすい「加工前提」のポイント
「図面寸法 = 素材寸法」だと思い込んでいると、いざ加工を始めたときに「削る余裕がない」という事態に陥ります。以下の部位は特に注意が必要です。
- 外径: 素材にはわずかな「曲がり」や「真円度の崩れ(完全な円ではない状態)」があるものです。正確な外径を出すには、一回り大きな呼称寸法の材料を選び、削り落とす必要があります。
- 内径: パイプ状の素材は、中心がわずかにズレていること(偏肉)があります。内径の精度や中心軸を合わせる必要がある部品では、必ず内径を削る工程を含めます。
- 長さ(L寸)と端面: 切断されたままの面は直角が出ておらず、長さも不安定です。図面の長さを確保するためには、少し長めの材料を手配し、両端を削って仕上げるのが常識です。
つまり、「素材の状態では、寸法や形の精度はまだ保証されていない」と考え、加工でその精度を出すことが正しい手順です。
材質選びのコツ:性能と「手に入りやすさ」のバランス
指定された材質がどうしても手に入らない場合、現場では「似た材質」「近い素材」を検討することがあります。その際の判断基準は、成分の完璧な一致よりも以下の点が重視されます。
- 系統が同じか: 同じ青銅系、同じ黄銅系など、金属のグループが同じであること。
- 削り心地が近いか: 被削性(ひさくせい:削りやすさ)が近ければ、加工条件を大きく変えずに済みます。
市場に流通しているか: 市場に在庫が豊富な材質を選ぶことで、納期とコストを抑えることができます。
まとめ:寸法保証は、加工が終わったら成立します
銅合金の素材手配において、最も大切な考え方は「素材寸法と完成寸法は別物である」という点です。
- 素材は「呼称寸法」で管理され、ばらつきのある状態で入荷される。
- 端面や外径・内径の精度は、すべて加工で出す。
このように、材料を「加工代が含まれた状態」として捉えることで、手配ミスや加工不良を未然に防ぐことができます。
まずは図面の寸法をそのまま追いかけるのではなく、「この寸法を出すために、どのくらいの大きさの素材が必要か?」という視点を持ってみてください。その意識ひとつで、現場でのやり取りがぐっとスムーズになるはずです。
不明点があれば、当社までお問い合わせいただければ幸いです。
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