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銅合金辞典

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給油の手間を減らす「オイルレスブッシュ」。母材となる銅合金の特性と選び方

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はじめに:軸受けについて

「軸受」(ベアリング)というジャンルからまず思い浮かぶのは、一般的にはボールベアリングかもしれません。

ボールベアリングは、精密かつ低荷重で動かす用途、高荷重がかかる環境では「スラストボールベアリング」などを使用しますが、大型化はコストもかさむ傾向にあります。

そのため、軸受の世界では「精密かつ低荷重」にはボールベアリング、「ゆっくりかつ高荷重」にはオイルレスブッシュというように、用途に応じた明確なすみわけができているのです。

高力黄銅系オイルレスブッシュの特性と選定:メンテナンスフリーを実現する固体潤滑技術

一方で、機械の可動部において、摩耗や焼き付きを防ぐために定期的な給油(グリスアップ)は欠かせない工程です。しかし、高所や土砂にさらされる環境、メンテナンスの難しい閉所など、物理的に給油が困難なケースは多々あります。

こうした課題を解決するのが、給油なし、あるいは給油回数を大幅に減らして運転できる「オイルレスブッシュ(固体潤滑剤埋込形軸受)」です。

今回は、オイルレスブッシュに焦点を当て、産業機械の主要部品である「高力黄銅系」母材の特性と、その性能を左右する「埋込型固体潤滑剤(カーボンなど)」の配列について解説します

母材に「高力黄銅」が選定される技術的理由

オイルレスブッシュの母材には、一般的に高力黄銅(こうりきおうどう)鋳物が採用されます。

JIS規格では「CAC304」など、旧称では「HBsC4」などに該当する材料です。

 一般的な青銅(ブロンズ)ではなく、高力黄銅が選ばれる理由は、その優れた機械的性質にあります。

高い耐圧性と剛性:高力黄銅は、銅に亜鉛を主成分として加え、さらにアルミニウムやマンガンを添加することで、銅合金の中でも極めて高い硬度と引張強さを備えています。建設機械や大型プレス機のように、軸受に非常に重い荷重(高面圧)がかかる部位でも、塑性(そせい)変形を抑えて軸を安定して支えることが可能です。

固体潤滑剤による焼き付き防止:オイルレスブッシュは、油膜が十分に形成されない「境界(きょうかい)潤滑」の状態において、母材自体に耐摩耗性がなくても、埋め込まれた固体潤滑剤の働きにより致命的な焼き付きを防止できます。

 

固体潤滑剤による自律的な潤滑メカニズム

オイルレスブッシュの表面には、埋め込まれた固体潤滑剤(カーボンなど)が規則正しく配置されています。

この構造により、外部からの継続的な給油なしで、低摩擦な運転を半永久的に維持することができます。

潤滑膜形成のプロセス

  • 潤滑油の保持: 使用される固体潤滑剤は多孔質な構造を持っているため、その内部に潤滑油を染み込ませています。
  • 油膜の供給: 摺動時の摩擦熱によって、固体潤滑剤内部の油が膨張し、摺動面へじわじわと供給されます。
  • 固体潤滑成分の転移: 染み出した油が、相手軸(シャフト)側に転移し、強固な潤滑皮膜を形成します。

このメカニズムにより、金属同士の直接接触を回避し、過酷な条件下でも焼き付きを防止します。

運動形態に応じた「埋込型固体潤滑剤(カーボン)の配列」

設計において最も重要なのが、軸の運動方向に合わせた埋込型固体潤滑剤(カーボン)の配列パターンの選定です。

摺動面全体に均一な潤滑膜を形成するため、一般的に以下の3つの属性に分類されます。

回転方向用

軸が一定方向に回転することを想定した配列です。円周方向に潤滑剤の軌跡が重なるよう配置されており、回転中に常に潤滑成分が供給されるよう設計されています。

往復運動(摺動)方向用

軸が直線的にスライドする動きに最適化された配列です。軸の移動軌跡に対して、潤滑剤の供給が途切れないよう長手方向に配置されています。

揺動・複合運動用

回転と往復が組み合わさる動きや、狭い範囲での揺動(ようどう)に対応する配列です。どの角度の動きに対しても、潤滑成分が常に摺動面をカバーするよう配置されています。

実務上の注意点:

運動方向に合わない配列を選択すると、潤滑剤が通過しない「未潤滑領域」が生じます。これが局部的な摩耗や焼き付きの起点となるため、軸の動きに合わせた型式選定が不可欠です。

運用限界と環境規制への対応

オイルレスブッシュの性能を最大限に引き出し、長寿命化を図るためには、以下の運用条件と最新の規格動向を把握しておく必要があります。

許容限界を示す「PV値」

軸受の能力は、面圧(P)と滑り速度(V)の積である「PV値」によって定義されます。

  • P(面圧): 母材が変形せずに耐えられる荷重限界。
  • V(速度): 摩擦熱による温度上昇が、固体潤滑剤や油の限界を超えないスピード。

許容PV値を超えて使用すると、潤滑膜の形成速度が摩耗速度に追いつかず、急激な性能低下を招きます。設計時には必ずこの値を算出し、余裕を持って選定することが重要です。

まとめ:正しい母材と配列の選定が信頼性を生む

オイルレスブッシュは、単なる省力化部品ではなく、人間の目が届かない所での故障を防ぎ、機械の稼働率を高めるための機能部品です。

  1. 高荷重・高剛性を求める部位には「高力黄銅系」母材を選定する
  2. 固体潤滑剤から自律的に供給される油膜形成メカニズムを活用する
  3. 「回転・摺動」それぞれの動きに最適な「配列パターン」を正しく選ぶ

これらの基本を押さえることで、メンテナンスコストの削減と、故障リスクの低い「止まらない機械」の実現が可能になります。

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