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銅合金鋳物における「巣」の正体とは?語源から学ぶ欠陥の分類と対策の基本
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はじめに:現場の「巣」という言葉に向き合う
銅合金鋳造の現場において、切っても切り離せない悩みの種が「巣(鋳巣)」です。加工面に出てきた小さな穴を見て、「鋳造不良かな?」と確認する場面は少なくありません。
しかし、ひと口に「巣」と言っても、その原因は空気の巻き込みから凝固時の収縮まで多岐にわたります。これらを正しく分類し、原因を見極めることが、歩留まり向上の第一歩です。今回は鋳造における「巣」の発生メカニズムや実務で重要となる欠陥の判別方法までを解説します。
1. 「巣」の意味
まず、私たちが当たり前のように使っている「巣」という言葉について整理しましょう。
工業用語としての巣の扱い
英語では、その形態によって「Cavity(空洞)」や「Porosity(多孔性)」と明確に使い分けられますが、日本の現場ではこれらを総称して「巣」という当て字が定着しました。このため、言葉のイメージだけで「一つの大きな穴」と思い込まず、「細かな穴の集合体である可能性」を常に考慮する必要があります。
2. 現場で最も警戒すべき「ザク巣」の正体
銅合金、特に砂型鋳物において頻繁に問題となるのが「ザク巣(多孔質巣)」です。
発生のメカニズム
金属が液体から固体へ変化するとき、その体積は収縮します(凝固収縮)。このとき、最後に固まる部分(最終凝固部)に対して、周囲から補給される溶湯が足りなくなると、結晶の間に細かな隙間が残ってしまいます。これがザク巣の正体です。
特に肉厚な箇所や、溶湯を補給する「押し湯」の影響が届きにくい場所、冷えにくい場所に発生しやすいのが特徴です。
銅合金ならではの見極め方
加工面や破断面でザク巣を観察すると、以下のような特徴が見られます。
- 形状: 結晶の隙間にできるため、丸みがなく角張った不規則な形をしている。
- 色: 銅合金の場合、空隙の内部が熱で酸化されるため、金属光沢がなく「黒褐色」を呈することが多い。
「断面が黒っぽくて、ザラザラした不規則な穴が集まっている」場合、それは凝固収縮に伴うザク巣である可能性が非常に高いと言えます。
3. 似て非なる欠陥「ブローホール」との違い
ザク巣と混同されやすいのが、ガスによる欠陥である「ブローホール(吹かれ)」です。原因が全く異なるため、判別を誤ると対策も逆効果になってしまいます。
ブローホールの特徴
- 形状: 液体の中に気泡が閉じ込められたものなので、内面は比較的滑らかで、全体的に丸みを帯びています。
- 色: 酸化の程度によりますが、ザク巣に比べると金属光沢が残っている場合もあります。
つまり、「角張っていて黒いのがザク巣」「丸みを帯びているのがブローホール」という判別が、現場における一つの大きな判断基準となります。
4. 知っておきたいその他の内部欠陥
「巣」の分類には他にもいくつか重要なものがあります。
- 引け巣(Shrinkage cavity):
ザク巣と同じく凝固収縮が原因ですが、微小な穴の集合ではなく、明確に大きな一つの空洞として形成されたものを指します。
- ピンホール(Pinhole):
溶湯に溶け込んでいたガスが、固まる瞬間に逃げ場を失って作った針の穴のような微小なガス孔です。
- 介在物(Inclusion):
いわゆる「ノロ(スラグ)」などの不純物です。空洞ではありませんが、加工した際に欠落してザラついた質感に見えることがあり、目視ではザク巣と見間違えることがあります。
5. 欠陥を防ぐための「温度管理」と「設計」の考え方
これらの欠陥を防ぐためには、感覚的な作業ではなく、物理的な理屈に基づいた管理が求められます。
温度管理は「高すぎず、低すぎず」
- 温度が高すぎる場合: 溶湯にガスが溶け込みやすくなり、ブローホールやピンホールのリスクが高まります。
- 温度が低すぎる場合: 溶湯の流動性が落ち、凝固収縮分を補給する「押し湯」が機能しなくなるため、ザク巣や引け巣が発生しやすくなります。
鋳造方案(設計)の重要性
特に冷却の遅い砂型鋳造では、「どこから固まらせ、どこで収縮を補うか」という設計が命です。冷やし金を置いて冷却速度をコントロールしたり、押し湯の配置を工夫したりすることで、製品内部の健全性を確保します。
まとめ:観察することが改善への最短ルート
銅合金の「巣」を減らすための第一歩は、発生した欠陥を「ただの穴」として片付けず、じっくりと観察することにあります。
- それは丸いか、角張っているか?
- 色は酸化して黒いか、光沢があるか?
- 発生場所は肉厚部か、それとも湯口付近か?
こうした事実の積み重ねが、原因が「ガス」なのか「収縮(溶湯不足)」なのかを教えてくれます。
つまり目に見えないほど細かな空隙の集合体であることを忘れずに、材料の凝固プロセスをイメージしながら対策を立てることが、品質向上となります。
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