記事公開日
銅合金JIS・EN・ASTMの違いとは?国際規格のハブ「UNS番号」を軸に体系解説

銅合金JIS・EN・ASTMの違いとは?国際規格のハブ「UNS番号」を軸に体系解説
銅合金の世界において、JIS、ASTM、ENといった規格名は、技術者や設計者、購買担当者が避けて通れない「共通言語」です。
しかし、海外図面で指定された材質を見て、「これはJISで言うと何だろう?」と頭を抱えた経験はありませんか? 銅合金の規格は単なる名称の分類ではありません。そこには成分、機械的性質、そして製造方法までを含めた「国際的な約束事」があります。
本記事では、技術者や現場の皆さまに向けて、主要3大規格の成り立ちと、実務で役立つ「規格の見方」を体系的に整理して解説します。
1. 銅合金規格の役割:なぜ複数のルールがあるのか
銅合金の工業規格は、生産者と使用者の間で品質を保証するための基礎となるものです。具体的には、以下の項目が厳格に定義されています。
- 化学成分: 銅、錫(スズ)、亜鉛などの主成分に加え、不純物の許容範囲。
- 機械的性質: 引張強さ、伸び、硬さ(硬度)といった物理的な強さの指標。
- 製品形状と製造状態: 連続鋳造や遠心鋳造などの「鋳物品」なのか、板や棒などの「展伸材」なのか。
これらが明確に決まっているからこそ、私たちは「この材料ならこの強度がある」と信頼して設計や加工ができます。
2. 世界を支える「3大工業規格」の現状
かつては各国が独自の規格を持っていましたが、現在は大きく分けて以下の3つの体系が世界流通の軸となっています。
JIS(日本産業規格)
日本国内で最も普及している規格です。鋳物材料を指す「CAC」記号や、快削黄銅の「C3604」などが代表的です。日本の製造現場に最適化された体系を持っています。
ASTM(米国材料試験協会規格)
北米市場だけでなく、国際的な商取引で最も広く参照されるデファクトスタンダード(事実上の標準)です。後述する「UNS番号」によって材料が一元管理されているのが特徴です。
EN(欧州規格)
EU圏の統一規格です。かつて主要だったDIN(ドイツ)やBS(英国)などを統合して誕生しました。現在は「CC(鋳物)」や「CW(展伸材)」から始まる記号で管理されています。
3. 国際比較の鍵を握る「UNS番号」とは?
海外規格、特にASTMを扱う際に必ず覚えておきたいのが「UNS(Unified Numbering System)」です。これは、銅合金を「C」から始まる5桁の数字で識別する体系です。
- C95400: アルミニウム青銅(JISのCAC702相当)
- C93200: 鉛青銅(JISのCAC406に近いが成分範囲が異なる)
このUNS番号は、米国材料試験協会(ASTM)だけでなく、自動車技術者協会(SAE)など他の規格でも共通して使われています。つまり、UNS番号を確認することは、世界中のメーカーと「どの材料の話をしているのか」を正確に共有するための大事な「ハブ(中継)」となる情報になるのです。
4. 現場で注意したい「旧規格(DIN・BS)」の存在
欧州ではEN規格への統一が進んでいますが、実務の現場では、今でも古い図面や指定で「旧規格名」が登場することがあります。
- 旧DIN(ドイツ): 「RG7」「RG5」などの呼称。
- 旧BS(英国): 「AB2」「LG2」などの呼称。
これらは現在のEN規格(例:RG7はCC493K相当)に引き継がれていますが、注意が必要なのは「成分規定の微差」です。古い規格と現在の規格では、許容される不純物の量などが微妙に異なる場合があり、特に環境規制(RoHS指令など)が厳しい現代では、安易な置き換えがリスクになることもあります。
現場での意識ポイント:
「旧規格名で指定が来たときは、現行のどのEN規格に該当するか、成分範囲に違いはないか」を一度立ち止まって確認する習慣が大切です。
5. 「相当材」は「完全一致」ではない
JIS、ASTM、ENの間で「相当材(似ている材料)」として紹介されることがありますが、これらは必ずしも「100%同じもの」ではありません。
- 成分範囲のズレ: ある元素の含有量が、JISでは合格でもASTMでは不合格になる、というケースが起こり得ます。
- 不純物の規定: 鉛(Pb)や鉄(Fe)の許容上限値が規格ごとに異なるため、特定の用途(飲料水関連や精密電子機器など)では問題になることがあります。
海外規格品を選定したり、JIS材で代替したりする際は、名前だけで判断せず、それぞれの規格書にある数値を対照して技術的な妥当性を検証することが不可欠です。
6. 実例:海外規格への対応と供給形態
私たちJマテ.カッパープロダクツでは、これら国際規格に基づいた多様な材質の製造実績があります。
- ASTM/UNS対応: C83600, C95400, C86300, C87850(高強度真鍮・シリコン青銅など)
- EN/DIN対応: CC333G (CuAl10Fe5Ni5-C), CC483K (CuSn12-C)
これらの材料は、用途や形状に合わせて「連続鋳造」や「遠心鋳造」といった最適な工法で製造されます。例えば、パイプ形状に最適な遠心鋳造では、1点からの製作も可能です。
まとめ|規格の理解は「設計・調達の品質」そのもの
銅合金の規格を理解することは、単に記号を覚えることではありません。その裏側にある「成分や強度の約束事」を理解し、適切に材料を選び出す力のことです。
- JIS・ASTM・ENは世界を支える3大ルール
- UNS番号は国際比較の共通軸として活用する
- 「相当材」であっても成分の微差には注意を払う
規格の違いを正しく把握することで、海外案件への対応力が向上し、調達トラブルを未然に防ぐことができます。
Jマテ.カッパープロダクツでは、海外規格品の製造・販売実績を豊富に持っております。「図面に書かれたこの規格に対応できるか?」「このASTM材の相当品は何か?」など、当社は今回ご紹介した各国際規格に適合した高品質な銅合金鋳物を供給しています。連続鋳造、遠心鋳造、砂型鋳造など、お客様のニーズに合わせた最適な供給形態をご提案いたします。
