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銅建値はどう決まる?LMEセツルメントと為替から紐解く価格決定のメカニズム

銅合金を扱う現場において、避けて通れないのが「材料価格」の話題です。見積書やニュースで頻繁に目にする「LME銅」や「国内建値」という言葉。これらがどのように決まり、私たちの現場にどう影響しているのか、その仕組みを基本から整理して解説します。
1. 世界の基準「LME(ロンドン金属取引所)」とは?
まず、すべての基準となるのがLME(London Metal Exchange)です。1877年に設立された世界最古の非鉄金属専門の取引所で、イギリスのロンドンに本拠を置いています。
ここでは銅をはじめ、アルミニウム、鉛、亜鉛、ニッケルなどの主要な金属が日々取引されています。LMEが「世界の基準」と呼ばれる理由は、単なる帳簿上のやり取りではなく、世界各地に公認の指定倉庫を持ち、「現物の受け渡し」を前提とした市場だからです。
これにより、世界中の鉱山、精錬メーカー、商社などがこの価格を指標として取引を行う、非常に透明性の高い市場となっています。
2. 銅価格が決まる瞬間「セツルメント(公定相場)」
LMEでは電子取引も行われていますが、現在でも「リング取引」という伝統的な対面取引が続けられています。
実務上で最も重要なのが、午前中の第2セッション終了時に決定される「セツルメント(Settlement:公式決済値)」**です。
- セツルメントとは: その日の公式な「現物価格」として発表される数値です。
- 役割: 世界中の現物取引や、翌日の日本国内における価格算定の「出発点」になります。
つまり、ロンドンで決まったこの価格が、時差を経て日本の銅価格を動かす最初の引き金になるのです。
3. なぜ「3カ月先物」が指標になるのか
LMEのニュースを見ていると「3カ月先物」という言葉をよく目にします。実は、市場で最も取引量(流動性)が多く、実質的な相場の指標とされているのは、現物ではなくこの3カ月先の価格です。
なぜ「3カ月」なのでしょうか。
それは、銅を鉱山で採掘し、船で運び、工場で精錬して製品にするまでに、おおよそ3カ月の期間を要するという物理的な背景があるためです。実需家(実際に銅を使う企業)が価格変動のリスクを避けるための「ヘッジ」として最も扱いやすい期間であることから、一般的に「LME銅相場=3カ月物価格」を指すのが通例となっています。
4. 日本独自の「銅建値」が算出される仕組み
私たち日本のユーザーにとってより身近なのは、国内の精錬メーカーが発表する**「銅建値(どうたてね)」**です。日本の電気銅(純銅)の卸売基準価格であるこの数値は、LMEの価格をベースに以下の要素を組み合わせて算出されます。
銅建値の構成要素
- LME価格: 前日のセツルメント価格(USドル/トン)
- 為替レート: 銀行の対顧客電信売相場(TTSレート)
- 諸経費(プレミアム): 海外からの運賃、保険料、国内輸送費、精錬コストなど
ここで注意したいのは、「為替(円安・円高)」の影響です。
たとえロンドンの銅価格(LME)が全く動いていなくても、円安が進むだけで、日本国内の銅建値は上昇します。逆に、LMEが下がっても、それ以上に円安が進めば価格が上がることもあります。日本の製造現場においては、ロンドンの相場と為替相場の「掛け算」でコストが決まるという点を意識しておく必要があります。
5. 現場への影響:製品価格とスクラップ価格
この「銅建値」の変動は、私たちの扱う銅合金製品やスクラップの価格に即座に波及します。
- 製品価格(加工品):
黄銅棒や青銅鋳物などの製品価格は、一般的に「地金代(銅建値連動)+加工賃(ロールマージン)」で構成されています。原料安・原料高がそのまま製品価格にスライドして反映される商慣習があるため、建値の変動はダイレクトに製造原価に響きます。
- スクラップ価格:
市中から発生するスクラップの買取価格も、銅建値を基準に「歩留まり」や「精錬マージン」等を差し引いて決まります。LME相場が急変すれば、市中のスクラップ回収価格も即座に反応します。
6. まとめ:実務でどう向き合うべきか
LME銅価格は、単なる投機的な数字ではなく、世界の需給を映し出す鏡のようなものです。しかし、時には投機資金の流入によって、実需とは関係なく乱高下することもあります。
意識していただきたいのは、以下のポイントです。
- 「単日の動き」に一喜一憂せず、移動平均などの「トレンド」を捉えること。
- 為替の動きが国内コストにどう影響しているかを把握すること。
- 納期や在庫量に応じた、価格改定リスクを常に想定しておくこと。
「LME銅」と「国内建値」の仕組みを正しく理解することは、適切なコスト管理や在庫維持の判断を行うための、大切な「基礎知識」となります。日々の相場情報を少し意識して眺めるだけでも、材料選定や納期管理の見え方が変わってくるはずです。
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