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銅合金辞典

記事公開日

銅建値はどう決まる?2 銅相場を「読み」、リスクを「慣らす」〜地金変動に振り回されないための実務・応用編〜

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銅建値はどう決まる?地金変動に振り回されないための実務・応用編

前回→銅建値はどう決まる?LMEセツルメントと為替から紐解く価格決定のメカニズム

(※一部、ブログ記載の修正にて記事が見つかりませんでしたと表示された事例があり申し訳ございませんでした)

前回の銅建値はどう決まる?が好評でしたので続きの話をしたいと思います。
さて、銅合金の世界で仕事をする上で、避けて通れないのが「相場」との付き合い方です。

「今日は建値(たてね)が上がった・下がった」という会話はよくある話ですが、実はその数字の裏側には、市場の熱量や、経営を守るための「守りの技術」が隠されています。

今回も皆さまに知っておいてほしい、相場の読み方とリスク管理の基本を分かりやすく解説します。

1. 銅市場の「熱」を測る:スプレッド(価格差)の読み方

銅の価格を見る際、現在の価格(Cash Price)だけでなく、「今すぐ買う価格」と「将来買う価格」の差に注目すると、市場の切迫感がわかります。
コンタンゴとバックワーデーションという言葉についてまずは理解しましょう。

  1. コンタンゴ(Contango / 順ザヤ)

「供給に余裕がある、落ち着いた状態」

  • 状態: 現物価格 < 先物価格(将来の方が高い)
  • 理由: 先物価格には、将来まで保管するための「倉庫代(保管料)」や「金利」が上乗せされるため、通常はこの形になります。
  • 市場のサイン: 供給が安定しており、今すぐ喉から手が出るほど欲しいというパニックはありません。
  • 現場の判断: 「急いで高い在庫を抱える必要はない。必要な分を計画的に買えばよい」という判断がしやすくなります。
  1. バックワーデーション(Backwardation / 逆ザヤ)

「在庫不足の事態」

  • 状態: 現物価格  >  先物価格(今の方が高い)
  • 理由: 「将来安くなるのを待てない、高くてもいいから今すぐ現物が欲しい」という需要が爆発しているため、現物価格が跳ね上がります。
  • 市場のサイン: 深刻な在庫不足や、物流の停滞、鉱山のストライキなどによる需給ひっ迫を意味します。3か月以上先々まで需要が底固く在庫がひっ迫しているような状態ではコンタンゴの場合もあり得ます。
  • 現場の判断: 「さらに手に入らなくなるリスクがある。コスト度外視で在庫を確保すべきか?」という警戒態勢に入るべき局面です。これは100%ではなく、このような傾向が高いという注意も必要です。
みなさんに知っておいて欲しいことは、昨今の様に実際の需給バランスだけではなく、投機的な価格変動が大きい場合は、より慎重な状況判断が必要ということです。

2. 在庫評価損を防ぐ「ヘッジ(つなぎ売買)」

銅合金の材料を大量に仕入れた後に、もし相場が暴落したらどうなるでしょうか?製品を売る頃には相場が下がっているため、高い材料費を回収できず、赤字(在庫評価損)になるリスクがあります。これを回避するのが「ヘッジ」という技術です。

  • 仕組み:

現物の銅を「買い」で仕入れると同時に、先物市場で同じ量の銅を「売り」で注文します。

  • 効果:

もし相場が下がっても、現物で損した分を、先物の「売り」ポジションを安く買い戻すことで得られる利益で相殺ができる仕組みとなります。

【現場でのポイント】

この手法を使えば、相場の上下に一喜一憂せず、当社を例にすると自分たちの技術料(鋳造の加工賃)をしっかり守るという経営が可能になります。

3. 為替予約の効果

日本の銅価格は、「ロンドン金属取引所(LME)のドル価格」×「為替レート」という掛け算で決まります。たとえ銅の価格が安定していても、円安が進めば仕入れ価格は跳ね上がります。

この不確実性を固定するのが「為替予約」です。

  • 仕組み:銀行などの金融機関と、「〇ヶ月後の決済日には、1ドル=〇円で取引する」とあらかじめ約束を交わします。
  • メリット:契約した瞬間に、数ヶ月後の支払額を日本円で確定できるため、突然の円安で利益が吹き飛ぶリスクを未然に防げます。

4. 価格変動の落とし穴:地金価格の高騰時に「実質利益」が減る理由

これは営業職や経営層が最も注意すべき「定率コスト」の罠です。

製品価格を「地金単価 + 固定の加工賃(ロールマージン)」で決めている場合、地金が高騰すると、会社に不利益が生じることがあります。
分かり易く地金を例にして見てみましょう。

  • 溶解ロスの影響:鋳造や加工の際、どうしても材料の数%は「ロス」として失われます。
  • 計算の例:ロスが仮に3%ある場合、地金が1,000円/kgなら30円/kgの損失ですが、地金が2,000円/kgに高騰すると損失額は60円/kgに膨らみます。
  • 結果:加工賃(マージン)を絶対額で固定していると、増大したロス費用(この例では60円/kg 分)を自社で負担することになり、手元の利益が削られてしまうのです。

まとめ:相場を「読み」、リスクを「慣らす」ための知識

銅合金の実務において、相場や為替は「予測するのが難しいもの」(※特に昨今の金属価格の投機的状況)ですが、同時に「仕組みを使えば管理できるもの」でもあります。

  1. 市場の熱(スプレッド)を見て需給を知る。
  2. ヘッジや為替予約を活用して不確実性を消す。
  3. 地金高騰時には「見えないロスコスト」を再計算する。

材料の特性を理解して高品質な製品を作る技術と同じように、こうした「数字のリスク」をコントロールする知識もまた、営業マンとして不可欠な武器となります。

現場での一つひとつの判断が、会社の利益にどう直結しているか。そんな視点を持って、明日からの業務に活かしてみてください。

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